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2010-10-16 (Sat)


   ガンで余命僅かのソル電機創業者社長日向はある男に殺される最後を選ぼうとする。
 その男とはソル電機の共の創始者で有り、そして結果的に日向が殺してしまった親友の息子である梶間。
 梶間にそのチャンスを与える為に幹部候補生の研修と見られている、実の所は「お見合い研修」に彼を含めた四人の男女を保養所へ招待する。
 日向は自分を殺しやすいように(尚且つ殺人犯とわからないように手助けする)あらゆる舞台設定をし、梶間が殺しに来るのを待つだけであった。
 だがゲストとして呼んだ碓井優香という女性の存在によって計画が狂い始めてしまう。 


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 *ネタバレ有り

 この作品は「扉は閉ざされたまま」のその後の物語とも言える。
 前作で活躍した碓井優香というキャラクターがこの作品でも同様の探偵的な担い手となる。碓井優香に「ホの字」だった私はまた彼女に再会出来て喜んだ。
 「扉は閉ざされたまま」の記事でも書いたが碓井優香というキャラクターは単に美しくて賢い冷静な女性ではないのである。
 ある意味無慈悲な所があって(私はそこが大好物なのですが)、そこがこの作品のラストではスパイスとなって効きまくっている。

 前作は最初から「起きた事件」に対する犯人と探偵が頭脳戦が繰り広げる攻防戦であったが、この作品は「事件が起きる」までの過程が描かれている。
 正直個人的にはこちらの方が好みである。前作の攻防戦はレベルの高さに痺れたのだけどほぼ最初からそのやり取りで上下二段の約250Pは若干もたれる部分というか飽きる部分はあったのと、しつこいけど動機の部分に納得がいかないので。そういう意味ではこちらの方の展開がバランスが良くてスマートである。

 石持さんの読者へのサービス精神は顕在である。時折その意欲が不完全燃焼になって肩すかしを食う場合があるが、この作品はまあまあ燃焼されていると思う。
著者の言葉として「その事件が「起きるまで」を丁寧に書こうと思いました。~被害者も、犯人も、探偵も、みんなそれぞれに努力していることがよくわかりました」とあるが、「みんなそれぞれに努力している」というのはちょっと笑える言葉だが読んでみると「その通りだ」と実感する。三者の思惑の交錯が私的には面白かった。

 被害者が犯人に上手く殺される為に殴りかかるのにちょうどよい大きさの花瓶を用意したり、仕掛けのし易い大きくて重い掛け時計の真下に小休止用の椅子を置いたりという小細工は若干笑える感じがして、殺されるのもなかなか大変だなあと思う。
 被害者が犯人の殺意に気づかない振りをしつつ殺人を誘うような言動をし、そして犯人が被害者を殺そうとするがその殺意を悟られないように機会を狙うドラマ性のある展開にページを捲る手が正に「進む君」である。 

 この二つの糸の絡み合いにもう一つの糸が加わり思いもかけない終盤へと向う。
 被害者は殺されたがっておりその舞台設定も整っているし、犯人も殺す気まんまんなのでいつお陀仏になってもおかしくないのだがそうは問屋が卸さない
 探偵が花瓶に花を活けて凶器として使えないようにしたり、椅子をが微妙に動かしたりして邪魔をする。果たして探偵は今回の件にどこまで気づいているのか?
 三者三様の思惑が絡みまくる。
 
 私はラストにおける被害者と探偵の対決構図の意外な成り行きに痺れた。
 探偵のアドバイスによって被害者はある観念に開眼する。その観念は社会理念と照らし合わせると「お~い、それでいいのか?」というものであるが、それまでの流れからは全く予想しなかった被害者の開眼にはカタルシスがあった。
 だがはっきり言って探偵のアドバイスは「探偵」という役割を逸脱していると思う。ある観点から見たら好意だけど、通常の観点から見たら「犯罪の後押し」であるからして。でもこういう担い手の探偵を駒とする所に石持さんの気概を見る気がする。
 このラストは探偵役の人物に好感が持てるかどうかでスパイスの効き方が大きく変わってくると思う。私のように好意をもっていればピリリと効くし、嫌悪感があればとんでもなく後味の悪い味付けになるだろう。

 読み手の感情によって味が変わるスパイスというのはミステリーにおいてはGJではないだろうか?
 
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| 石持浅海 | COM(0) | TB(0) |















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