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2010-10-06 (Wed)


色んな運命の岐路に立たされた人達の短編連作集
 
 「時の魔法使い」
 プロットライターの朝岡未来(あさおかみく)はシナリオライターになる事。かつては応募したコンクールで受賞まで後一歩の所まで行きながらも逃してしまう。
 自分の名前「未来」を希望の「未来(みらい)」と言い聞かせ自分を鼓舞していたが、シナリオライターへの道は険しく生活費にも困る有様で現実の苦しさに押しつぶされそうであった。
 幸福な子供時代を過ごした実家が懐かしくなり帰郷するが、未来はそこで20年前の子供の頃の自分と出会う。
 母親から9歳の時に丸一日行方不明になった事を聞かされた事があり、そしてその日が正しく20年前に行方不明になった日と同じ日にちであった。
 未来は丸一日幸福な子供であった9歳の未来と過ごす。。。
 
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 高野和明さんは直木賞を受賞した「13階段」が私にとってのデビュー作品である。その作品が結構面白かったので「6時間後に君は死ぬ」を読んだ。これも中々面白くて結構手堅い才能の作家さんなのかなと思った。

 この作品は予知能力を持っている山葉圭史がメインのお話しである。
 彼は他人の非日常的なビジョンだけは見る事が出来、それは他人にとって不幸になるビジョンもある。
 最初と最後は山葉圭史が主軸になるお話しだけど、他は山葉圭史がメインではなく(なんらかの形では関与している)別の主人公達の連作になっている。
 この構成の仕方がまず個人的にツボに入った。
 ミステリーである「6時間後に君は死ぬ」の後は一旦メイン主人公である山葉圭史が表舞台から姿を消す。そして同じテーマだけどミステリーとは違うドラマ性で一生懸命に生きている人達の姿が描かれており、その流れが上手く「3時間後に僕は死ぬ」にバトンタッチされラストのお話に活きていると思った。
 
 私が個人的に一番印象に残ったのが「時の魔法使い」である。
「夢を追う」というのは甘美だけど常に現実の厳しさがある。未来が一生懸命に自分を鼓舞しながら、前向きに生きる事自体に疲れている姿がかつての自分と重なった。前向きに生きようとしてもそれでもつらい時は本当にしんどい。
 若干ネタバレになるがそんな未来が「9歳の未来」と一日だけ過ごしながら、もう一度夢に向かう力を取り戻す物語なのである。

 無邪気なただただ幸福だった幼き頃の自分。その無垢なに心に留まったを澱が溶かされていく。かつては自分もそういう時が確かにあったのだと思い出す。
 そして未来は年を重ねていくうちに背負った色んな荷物を一旦降ろして周囲の風景をしっかりと見る。
「不意に未来は今の自分自身に愛おしさを感じた。これまで自分ず過ごしてきた時の流れが、とてつもなく大切なものに思えてきた」 
このセリフを読んで自分が思っているより世界は優しいものなのかもしれないと思った。ひょっとしたら自分が難しく苦しいものにしているのかもしれない。

 9歳の未来の「私、こんなに優しい人になるんだ」というセリフには感動させられた。弱っていた私の心にはよく効いた。このセリフは未来にとって今までの自分を肯定される心に貼られた特大のバンドエイドだ。
 「悲しみも自分の人生の一部。今ここにいる自分を作り上げた大切な人生の断片」 
 と現実の苦しさを含めても今の自分をしっかりと受け止めていく。
 結局の所迷ったり苦しんだりしている時はあれこれするよりも、まずは今の自分をしっかりと受け止めて事から始めるべきなんだろう。
 未来が今の自分を受け入れる過程を無理なく心に染み入るような過程で描かれている。他の短編でもそうだが高野さんは若干不器用なタッチながらも心に響くような音色を奏でるのは上手い。

 「今の未来」と「9歳の未来」にファイトを頂いた。


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| 高野和明 | COM(0) | TB(0) |















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