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2010-08-18 (Wed)


主人公の晴海戸苫子は26歳のフリーターで処女。
 ブスでも無いし、頭も悪くないし、手先も不器用でもないが、何故か自分を取り巻く世界としっくりこなかった。
 そんな他人と上手く付き合えない自分にイラだち持て余していた。
 彼女が生き辛い現実でやっていく方法として、何か嫌な事がある度に首の襟足の所に自分だけに見えるスイッチを押して自分をその場から消し去り、他人も同様に消し去る事を夢想していた。
 
 
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 「スィッチ」は「第一回 日本ラブストーリー大賞 審査員絶賛賞」を受賞した作品である。
 もっとも「審査員絶賛賞」はこの作品の為に特別に設けられた賞であり、こういうエピソードが如何に評価を受けた作品か端的に示しているだろう。
 この作品は審査員のお言葉にあるように、
 「平成ニッポンの『ライ麦畑をつかまえて』です」柴門ふみさん
 「ニート世代の太宰治「人間失格」かも」桜井亜美さん
 

まあ、所謂「それ」系のお話である。もう少し親切に説明するなら「世の中と仲良く出来ない自意識過剰な人間」のお話かな。

 とにかく新人さんとは思えない「物語」の紡ぎ方の上手さに驚嘆してしまった。
 まずキャラクター達の関係性の巧みさ。
 若干の恋心を抱くサルという男性との距離感があるようなでも切実なような微熱感覚、美味しい所取りの男受けだけはとびきりいい瑠夏とのあるようなないような友情、そして八方美人で人当たりはいいが実の所は苫子を見下している結衣との捻れた関係等。人間関係の心の「体温」と「距離」が絶妙なバランスで描写されている。
 そしてこれまた登場人物達のキャラクター造形が素晴らしい。本当に個性豊かに描かれる人間描写は血肉が通っている所か骨まであるんじゃないかという位だ。息づかいすら感じさせるリアリティな描写には脱帽。
 現実というラインにギリギリ迫っているようなリアルさ故にバッチリと心に響いて来る。
 楽しみな作家さんが誕生された事を喜びたい。 

 きっと覚えがあると思うけど「自分は特別」という自意識過剰、でも「何者でもない、何者にもなれていない自分」という現実とのギャップに苦悩した時期。でもそのクセ前向きな努力はしていない。勿論まるっきり努力していないわけではないのだけど、自分への言い訳レベルの範囲。
 「おしゃれじゃなきゃいけない」「キレイじゃなきゃいけない」そういう世間の価値基準を「へっ」と思いながらも、それらを満たしていない自分への失望。でもそれを気取られたくないプライドの高さ。
 かつての自分嫌な部分を薄皮を剥ぐように読まされている感じで主人公の苫子にイライラした。熱さも喉元過ぎればなんとやらである。
 「それ」系のお話しで女性が主人公というのは自虐ギリギリのラインになるなあと思ったよ。

 苫子が中々世の中と他人と自分と上手くやっていけないのは、自分を肯定出来ないから自我の軸がブレてるからだと思う。自分を肯定する事の難しさというのはよーく理解出来る。
 そんな彼女が悩んでいる中で今の自分を少し受け入れるポイント見つけていく姿が描かれている。
 若干ラストのネタバレになるが勿論抱えている問題が解決したわけでもないし、すぐに性格が変わったわけではない。でも少し足元が地についたお陰で今までよりは楽な姿勢で歩んでいくだろう様が気持ちの良い。
 大人になるというのは「何者でもない自分」を肯定出来ることなのかなあと思う。

 「人間失格」も「ライ麦畑でつかまえて」もどちらも主人公はアンハッピーだが、「スイッチ」の主人公はパッピーエンドというのとは違うのかもしれんが、光ある終わり方なのは作者であるさとうさくらさんの心意気だと思った。


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