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2010-06-12 (Sat)


 ジャスシンガーとして生きる杏子には暗い過去があった。
 暴力団員である元夫の石神には精神と肉体共にボロボロにされ、なんとか離婚できてようやく新たな人生を歩み始めたばかりであった。
 杏子にはある特殊な能力が有り、だがそれは石神から受けた精神に歪みを起こさせる暴力がきっかけとなり目覚めた能力であった。
 その能力とは「場所」に残された声を頭の中で聞き自分の口を通してその声を再生出来るというもの。
 杏子にとっては忌まわしい能力であったがあるきっかけで警察に知られ、その後も何度も捜査に利用しようと協力を求められる。
 杏子は苦渋の選択でその要請に応じるが。。。


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 柴田さんの作品の出来は大波小波と波がある場合が多いが、この作品は中波位で波から落っこちる事なく一応乗れている感じである。
 中波と評したのはもっと良い作品になる余地があるのに各々のピースを活かしきれていないような箇所もあり、それと少しご都合的な所もあって惜しいなあと思う。

 私は基本的に日常に出てくる超能力者の話しは好きではない。
石ノ森章太郎氏のかの名作「幻魔対戦」や大友克己氏の「AKIRA」のようなパラレルワールド(超能力者がいても違和感無い設定)における超能力の話はワクワクドキドキして好きなのだが、ベランダに干された洗濯物や買い物かごに入った白ねぎ(あくまでも私の中の日常のイメージ)が出てくるような日常における超能力者というのはなんだか不似合いで反則技のような気がしてしまうのである。

 それでもこの作品を私が受け入れられたのは元々杏子は超能力者ではないが理不尽な経験によるトラウマで能力を目覚めさせられ、その能力に苦しみながらも自分自身の弱さと戦う一人の女性の再生の物語という日常的な題材が着地点となっているからだと思う。
「超能力」はあくまでもその為のモチーフという位置づけで、超能力者同士の仁義無き戦いなど出てこないのだ。
 面白い事に杏子の再生を示すバロメーターのように、彼女の能力は物語が進むに従って残響を捉える能力が変化していく。
 最初は恐怖というバイパスが必要な為か元夫である石神が一緒でなければ発揮出来ない能力であった。
 だがいつまでも彼に縛られたくないという意志が、自分と同様の悲惨な仲間を見つけるという逃避で残された「声」を聞くのではなく誰かの為に役立ちたいとい前向きな使い方になっていく。
 また仕方なく捜査に協力していた杏子だが事件と向かい合うたびに、その事件の真実に触れその悲しさと残酷さにもまれているうちに皮肉な事にたくましくなっていく。
 こういう気持ちの変化のディティールが丁寧に書かれておりそれは読み応えがあった。

 ただそういう部分がメインだから超能力を使って解決する事件そのものはそれ程ひねりがなくあまり面白くこの辺りは残念である。
 ここが活きていたら大波へ昇格なのだが  

 杏子を取り巻く人間模様は中々に面白い。
 密かな思いを抱くが妻子持ちであるピアニストの東海林や自分とは正反対の強い意志を持つ女刑事の葵。そして石神。
 脇が魅力的だとやっぱり物語は映える。
 特に一番興味深かったのは石神で、最初は悪いやっちゃと思っていたが実際悪い奴なのだけど型にはまった悪キャラではない。
 ラストのラストで石神にまつわるエピソードを、この連作集のタイトルとなっている「残響」を上手く織り込んだのはなんだかジーンと来てしまった。

 心憎い締めであった。

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| 柴田よしき | COM(2) | TB(0) |















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