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2010-05-29 (Sat)
 

 桐島椿は23歳。
 美貌の椿の絶対的な価値観は「美しさ」。
 ボーイフレンドはいるが自分に幸福を与えてくる条件の良い男性との結婚を虎視眈々と狙っている。
 性格不美人の為に女友達はほとんどいないがそんな事は痛くも痒くもなく今の享楽を謳歌していた。
 そんな椿のあこがれは美しさと毅然さを持った祖母であった。祖母のようになりたい、なれるという思いが誇りでもあった。
 美しい女性である椿に怖いものはないはずだったが、尊敬する祖母のボケ、父親の破産と病気等により、自分がかつて手にしていた享楽が失われつつあった。
 物事の歯車が上手くいかなくなり急激な環境の変化に取り残される椿はもがき苦しみつつも、なんとか玉の輿に乗ろうとして逆転を狙うが。。。
 

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 山本文緒さんの作品は苦味のようなものがありそれが彼女の味の一つになっている。
 生きている事の灰汁(あく)のような痛みとでもいうか、そういうものを上手く料理に取り入れるというか混ぜ込むのがとても上手。レシピの上手さでどこかクセになる苦味に仕上がっているとでもいうのか。
 で最近初期の頃の作品である「きっと、君は泣く」を再読した時がこれはクセになる苦味どころか、あまりの大苦さにおののいた。

 いつもの事だが私はこの本の内容の大半は忘れていた。
 最初は普通の物語だなあと思っていたら中盤辺りからの思いもかけない展開の連続に驚いた。
 びっくり箱を開くとまたびっくり箱が出てくるという感じで一体何事へと向うのだろうという面白さがあった。下戸なので酒は飲まないが気分的にはちびちび飲む感じて再読しようと思ったがあまりの面白さに辞められず一気に読み終えた。
 初期の頃だから当然まだ最近の作品に見られるプロとして魅せ方の技巧さはないけど、だからこその勢い感というかテンションの高さがある(それが故に風呂敷広げ過ぎではあるが)。
 個人的にはどこか低温感情な感じがする山本さんにもこういう作品あったんだなあと思った。

 私は美人ではない。
 それ故残念ながら美人の人生というのがどういうものかよくわからない。美人だったらきっと人生違っていたんだろうなあと遠い目をして思う。
 美人で生きるってこういう感じなのかあと思いながら読んでいた。
 個人的に「美しさ」も生まれ持った能力と言う意味では「頭が良い」とか「早く走れる」という類と同様の才能だとは思っている。
 だから椿は山本さんの作品の主人公でめずらしく共感しずらいタイプだが、自分の才能は「美しさ」と徹底しているのはある意味あっぱれだと思える。
 ただお友達にはなりたくないけど。 

 この作品は帯にも書いている通り「美人だって泣きを見る」話である。
 個人的には泣きを見る以上で号泣を見るという感じだ(こういう言葉があるのかわからないが)。
 主人公椿の絶対的な価値は「美しさ」である。その美しさで人生を美味しい思いをして生きてきた。それが故に当然他人様への想像力に欠け同性からは好かれないがそんなのお構いなしであった。
 だが「美しさ」は内面の美しさというか魅力を伴わない限り若さを失うとダメになってしまうものである。
 椿はまだ20代前半だが若さを失いつつある自分を取り巻く世界が少しずつ冷たくなっていくのに気づき、そういう状況で迷子のような焦燥感を持つ椿がなんだか愛おしく思えてくる。努力の方向はあれだけど自分の欲望に一生懸命だからだろう。
 
 椿の支えは自分とよく似ている美しい祖母であった。年を取っても威厳と張り詰めた美しさを持つ祖母の存在が彼女の価値観を強固なものにしたが、その祖母の美しさは結局は実りを伴っていなかった事を知り愕然とする事になる。
 自分のまわりの環境の変化にそれまで信じていた価値観では支えきれなくなり、それが崩壊していくのは本当に怖いなあと思う。でも自分が今いる場所が激震する中でも結局椿が椿である事は変わらないというか変えられない彼女の馬鹿さが、何故かかっこよく思えたりするのもやはり山本マジックかなと思う。
 その馬鹿さはある意味「強さ」にも似ているからかもしれない。全ての強さに価値があるとは思っていないがたくましさを抱かせる。根っこの所で女性はたくましく出来てるんだろう。
 
  
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| 山本文緒 | COM(2) | TB(0) |















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