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2010-04-07 (Wed)
 

  丸の内のオフィス街にある小料理屋「ばんさい屋」。
 そこには笑顔を絶やさない控えめな女将と、何となく懐かしい味の白いご飯が欲しくなる「おばんさい」があった。
 店に集うお客達の人間模様が抱える謎を女将が鮮やかに紐解いていく。
 殺された常連客の最後の行動を推理する「桜夢」、子供の毒殺未遂事件「愛で殺して」等の幾つかのミステリー連作集でありながら、且つ女将自身が隠してきた過去が話が徐々に明らかになってくという仕掛けも持った傑作集。

 「聖夜の憂鬱」
 ばんさいやの12月。
 長崎真奈美は二ヶ月前からお店に顔を出し必ずかぼちゃの煮つけを注文していた。
 だがたまたまその日はかぼちゃの煮つけが売り切れ、来店した真奈美は代わりにお酒を注文したがあまり幸福な飲み方ではなく女将はそれが気にかかった。
 偶然街中で彼女と会った女将はこの前のお酒を飲んだ事情を聞かされる。
 真奈美が幼い頃に父親がイブの夜ホームから転落して亡くなっていた。その日父親が彼女へのクリスマスプレゼントの為に買った赤い大きな箱は盗まれてしまい遂に真奈美の元へ届く事はなかった。
 それ故真奈美はクリスマスを憎んでいた。だがそんな彼女にある奇跡がもたらされる。

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 この「ふたたびの虹」は柴田さんの作品の中で一番自信を持って他人に勧められる作品である。
 勿論彼女は他にもたくさん秀作はあるのだけど割と好き嫌いにわかれそうな色を持った作品が多い。
 だがこの作品はそういった色合いはなりをひそめて万人受けしやすい作風に仕上がっている。 

 「聖夜の憂鬱」の主人公である真奈美はクリスマスに起こった不幸の為に、みんなが幸福に浮かれるクリスマスを憎んだまま大人になってしまう。
 だがクリスマスを楽しい日に変えられる出来事が起こる。
 ネタバレになるので控えるが真奈美にもたらされた奇跡は実は女将の粋な計らいであり、それが心憎いのである。
 この作品を読んで結局の所物事に対する事実は一つだけど、真実というのは幾つかあっても良いのではないかと思っている。
 それが事実かどうか関係なく、その人にとっての真実であればそれが真実いいんじゃないのかなと感じた。
 事実は変えられないが、自分の思いは変えられる。 

 こういった「ばんさい屋」に集う人々の人間模様の面白さだけではなく、その時々の旬の食材を使った料理を上手く作品に絡めている。それがこの作風を支える味になっている。
 桜飯、マツタケの土瓶蒸し、たんぽぽの根のきんぴら等の美味しい食べ物の描写がぞくぞくと出てくる。今こうやって書き出しても美味しそうだけど、読んでいても本当に美味しそうであった。
 食べ物の場面を美味しく描くのは簡単なようで実はなかなか難しいのではないかと思う。単に状況描写だけではお腹は空けない。筆力が感覚に訴える部分を持っていないと読む者が「お腹空いた」にはならいだろう。
 ああ柴田さんてやっぱり力のある人だったんだなと再認識させられた。 

 美味しいものを食べると幸福感に包まれる。その幸福を思う時やっぱり人って食べて生きていく生き物だなと思う。
 だからこの作品を読んでいるとこんな店があればなあという気持ちがふつふつと沸いてくる。
 友人ではないが楽しい一時を共有し合える顔見知りと、美味しい食べ物と、心地よい空間。おまけのようなささやかなでもちゃんとした幸福感を感じさせてくれるお気に入りの店。お店に通う登場人物達が本当にうらやましいと思った。

 この作品は結構珠玉の言葉が盛り込まれている。下の言葉もイイ。   
 「人の一生は、その中にいつも幸福と不幸を取り混ぜて持ち合わせ、泣き顔と笑い顔を忙しく交互に繰り返し、やがて時が経ち、どちらの時間がより長くても、最後には、黄昏れてゆく陽射しの中でこうして横たわってその時が終わるのを待っている。
自分の中にその時が訪れた日、自分のそばにこうしていてくれる人を持っていられたなら、それほど完璧な一日はたぶん、ない。」

 人生色んな事があってもゴールに辿り着けば全てがひとつになって受け入れて最後を迎えられるのだろう。
 そう考えると悪くないもんだなと思う。 

 ダイエット中以外の人にはお勧めである。


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| 柴田よしき | COM(8) | TB(0) |















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