12345678910111213141516171819202122232425262728293031
-------- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
| スポンサー広告 |
2010-03-31 (Wed)
 

  結婚にまつわる八つのお話
 
 「崩れる」
 芳恵は毎日の生活に疲れていた。つらい単純作業のパートに出て家計のやり繰り。それも自称イラストレーターと称し全く家にお金を知れない夫浩一のせい。
 浩一はどうしようもない「カス」であった。人間としての最低限の責任感ももっておらず無責任極まりない男であった。仕事で疲れて帰って来ても食事の支度は芳恵がせねばならず、彼女はひたすら息子義弘が結婚するまではと離婚を我慢していた。
 たがその期待の息子はアニメーターになると夢見てせっかく就職したばかりの銀行を辞める。そして暫く無職のままで過ごす。義弘は夫浩一のダメな所がよく似ていた。 
 希望は潰え、自分と同列と考えていた友人が借家住まいから抜け出し家を持ったと知り心に亀裂が入る。
 少しずつ芳恵の中の心の燻り続けた炎は暑い暑い夏の日に燃え盛る。
 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  
 貫井さんとの初お見合いはこの短編集である。
 図書館で何気なく手にした時なんとなくビッビッ!!!と来るものがあり借りてきた。こういう勘はたいてい当たるが、見事ビンゴである。  どの作品もピリッとしたスパイスが効いていて面白かった。
 貫井さんの上手さが端的に堪能出来る短編集だと思う。

 ラストの伏線が故に夫浩一のカスぶりと息子義弘のダメぶりが執拗に書かれていてその描写が本当に効く。読んでいてみのもんた口調で「奥さん大変だね」といたく芳恵に同情してしまった。
 芳恵の出口の見えない袋小路的なやるせなさがよく書かれている。
 ラスト辺りでそのやるせなさを「暑さ(熱さ)」と結合させて爆発させている下りは圧巻である。読んでいて心というより「暑さ(熱さ)」が皮膚感覚に訴えて来る感じだった。
 解説者の桐野夏生さんもおっしゃっていたがラストの悲惨さはカタルシスだと思う。本来ならば悲惨なラストが悲劇ではなく「ああすっきりしたな」という感しで、その爽快感がなければ物足りなかった作品かもしれない。その着地点への持って行き方が気持ちと感覚の両方に訴えかけてるのが巧みである。

 どの作品も結局の所他人との関係性に潜んでいる「怖さ」が描かれている。
 通常は会社であっても親しい友人や肉親でも当たり前だけどその関係性に応じた距離感で付き合っている。
 だが一旦その距離感が崩されその関係性を一皮剥けば思わぬ闇がある。それは多分どんなに愛情を抱いている者同士であっても存在しているものだと思う。
 そういう普段は潜んでいるが間違いなく抱えているはずのその怖さを見せ付けられた気がした。
 お日様が当たるごくごく普通の日常に潜む「闇」というのは人事ではない、いつ自分もそれに出くわす事があるかもしれないというじわりと来る怖さであった。

 モチーフが同じでも趣の違う作品を8つの作品は読み応え十分である。
 私と貫井さんの初お見合いは成功であった。 

ランキング落ちているので、ぽちっと押してやって下さい。 お願い致します。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村
| 貫井徳郎 | COM(6) | TB(0) |















管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。