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2009-08-19 (Wed)
   

 主人公の櫛森秀一は17歳の高校生。
 女手一つで育ててくれる母親と優しく素直な妹を何よりも愛し大事にしていた。
 そんな三人の平穏で幸せな生活も破綻する。母親が10年前に再婚し、その後別れた曾根が家にやってきて好き放題に振舞い自分達を苦しめる。民事不介入の警察も、狡猾な曾根には法も効力を持たなかった。
 母親も妹も餌食になると思った秀一は愛する家族を守る為「完全犯罪」に挑み、曾根を葬る決意をする。


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  貴志祐介さんの作品は「黒い家」→「十三番目の人格 - ISOLA」→「青の炎」の順で読んだ。
 全二作は特異なテーマを抜群のストーリーの面白さで織り上げており、素晴らしい才能と巡りあえたことを喜んだ。
 がっ、私はぜいたくにも「これで深みがあれば完璧だな」とのたまった。勿論何れも深みがなくても文句無しの作品の出来栄えなんだけど。
 でも「青の炎」を読んだ時、全二作には無かった深みがあった。元々抜群のストーリーテラーだけにそれが加わった事によって、
「正しく鬼に金棒」 
という感じて瞠目すべき作品である。

 主人公の秀一が殺人を決意するのはただただ愛する母親と妹を守るため。その自分の愛する世界を破壊されていく苦悩と悲しみ。 秀一は頭の良い少年だけど、それでもまだ高校生の彼が手が届く世界の範囲は決まっている。
 そんな彼の苦悩がひしひしと胸へ迫ってくる。「あ~誰かどうにかしてやってぇぇ」と読みながら何度も思った。 自分の愛するもの守ろうにも、まだ子供の自分では守るべき武器が少ない。そのくやしさと孤独が切ない。この作品を読んでいると何度も切ないと呟いてしまう。
 結局秀一は自分の使える武器の最も切れ味のある「殺人」という手段を選択してしまった。
 
 彼自身は完璧だと思っていた殺人計画も思わぬことで綻びが生じる。そしてその綻びを繕う為に更なる殺人を重ねる。最初は家族を守る為の殺人がどんどん思わぬ方向へと転がっていくのは読んでいてつらい。きっとこの先の景色は悲しいものになるだろうなと予兆してしまうからだ。
 作中の言葉を借りるなら「自分の瞋り(いかり)の炎」で結局は自分も焼き尽くす事になってしまったということか。
 
 ただ秀一は純粋な少年というわけでもない。頭の良い少年が陥りがちな若干の他人の見下しやうぬぼれ感も持っている。頭の良い人間が陥りやすいの「机上の理論」」の為、殺人計画も詰めの甘さが有り露見してしまう。
 他のレビューを読むとその秀一の性格に不満な方も割りといるようだけど、私的には今時の高校生という感じがして逆にそれが良かった。ただ純粋だけではウソくさい。
 むしろ若干うぬぼれやの秀一が人を殺してしまったという「事実」の重みに苦悩する姿が泣けてくる。 
 向こう側の世界へと超えると、もう絶対にこちら側には戻れない。より深い孤独の中で彷徨う秀一を見ていると「守られる側」にいるべきだったのにと思う。 

 ラスト辺りから警察に追い詰められるシーンはこれまた切ない。
 愛するものを守る為に秀一は秀一なりの精一杯の選択だったのに、結局誰も救われずむしろ自分を含めた愛するものを不幸へと導く結果を招いてしまう。結局秀一のやったことは何の実りもなかった。
 その辺りのやるせなさが容赦なく描かれいて、
 「貴志さん、金棒振りすぎだよ」
 とのたまりそうになった。 

 ラストは驚きの結末を迎える。
 このラストが故にこの作品は一歩上の作品の完成度になった。多分秀一が愛する家族を守るにはこのラストしかないのだとは思う。

 頭から尻尾の先まで「切なさ」が詰まっていた作品である。

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| 貴志祐介 | COM(6) | TB(0) |















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