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2009-06-10 (Wed)
   

 1998年の暮れに起こった事件。
 一人の女性が宅配で送られて来た青酸カリで自殺した。その青酸カリを送った草壁竜次(仮名)という青年も責任を取って自殺する。

 ネットという媒体を通して見知らぬ者同士が青酸カリのやり取りをしたこの事件。
 最初は死の商人的な扱いを受けた草壁竜次だが、ネット上で共にHPを運営していた彩子という女性が「彼は生きてもらう為にこそ青酸カリを渡した」という言葉が衝撃を与える。

 精神医療の現場に携る著者がこの特異な事件を真摯な思いで再構築したノンフィクション物語。


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 この事件はかなり話題になったので記憶にある人も多いのではないかと思う。

 草壁さんがやった事を「正しい」か「間違っている」かの物差しで計るなら当然「間違っている」になると思う。
 じゃあ「絶対的に間違っていたか?」と問われたら、私は何も言えないだろう。
 彼自身も鬱病患者であり、薬でも医者でも治せない鬱病患者のみに青酸カリを渡すという基準を設けていたらしい。 

 「青酸カリを入手していつでも死ねるのだから、もう一日だけ頑張ってみようと自分に言い聞かせることによってしか生きていけない病人がいる」
 という人達に逆説的な意味で青酸カリを送った心情はとても理解出来る。

 何故なら心の病に理屈は通用しない。これ程理屈の通用しない世界も珍しいくらいだと思う。
 とにかく「死にたい」という気持ちがやってくると、どんな理屈も吹っ飛ばしてくれる。
 それまで曲がりなりにも十数年以上生き来て、楽しい事も嬉しい事も一杯あって、大切な人や物や事柄も一杯抱えていても、でもその時はそれらのものが何の意味も意義も持たなくなる。

 それは本当に悲しい。それまで培ってきた全てのものが無になるのだから。。。。

 ただただ地の底から死の世界へと引きずり下ろすような死への衝動が沸いてくる。
 もうその時その世界には何も存在しない。本当に一人なのである。

 この本はそういった人達の物語である。読んで初めてあの事件にはこういう景色があったんだと知る事が出来て良かったと思う。
 著者の矢幡さんはなかなか書く力のある方で、勿論彼の視点を通して書かれた事件の全貌だけどよくぞここまで迫っているなと感嘆してしまう。

 生前の草壁さんは、
 「私だってできることなら、普通に生きていたかった」
 という言葉を残している。
 この気持ちは本を抱きしめたくなるほど痛いほどよく理解出来た。
 とにかく調子の悪いときは「おはようございます」から「おやすみなさい」まで一日中症状に悩まされてその日を終える事がしばしば。
 「ああ、普通に生きたい」と心から切望していた。

 若い頃は「普通」という言葉はプラス方向の言葉として捉えてはいなかった。
 最近はようやく「普通」という言葉の持つ凄さを噛み締めている。

 フツーでいいんだよなあ。。。。。。。。。。。。。。。。(この句点の数が煩悩だな)。

 
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