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2009-05-06 (Wed)
   

 奨励会は将棋を愛する限られた才能が集いプロ棋士を目指す場所。
 しかしそこは極めて厳しい勝負の世界であった。
 自らもプロ棋士を夢見ながら挫折し「将棋世界」の編集長を勤めた事もある筆者が、夢叶わぬ者達へと優しい眼差しを向けその物語を綴ったノンフィクション。


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  私は盤上ゲームと言えばオセロゲームしかやった事がなく、将棋は「将棋崩し」というゆるいお遊びしかやった事がない。だからほとんど将棋の事は知らなかった。
 
 この本を読んで初めて奨励会の厳しさを知った。勝負の世界は何れも厳しいけど、奨励会の際立った厳しさの大きな要因が「年齢制限」にある。
 21歳の誕生日までに初段、26歳の誕生日までに4段をクリアしていなければならないのである(現在は違うのかもしれないが)。もしクリア出来なければ例外なくそれまでの全てをかけた夢は閉ざされて、その世界からは去らなければならない。

 10代後半から20代半ばというのは、
 「色んな意味で一番美味しい時期」 
 だと思うが、著者の言葉を借りればその決められた年齢が近づくにつれて「体中が総毛立つような焦燥感」をたっぷりと味わうようである。

 今は違うようだけど当時はプロ棋士の卵達は高校も行かず文字通り「将棋付けの毎日」を送る。
 将棋という特殊な世界で、特殊な環境で育つから本人が望まなくても「スポイル」された人間になる。
 その状況で、しかも大きな挫折を抱えて敗れた者は世間に放りだされてしまう。プロ棋士になるよりも散っていく者が多いが彼等にスポットが当たる事はない。
 著者の大崎さんがどうしても彼等を書かなければならないと切望されたのも当然の事だと思う。

 この本には夢破れた者達が幾人か登場するが、その中の主人公が成田英二さんである。 
 成田英二さんは大崎さんと同じ将棋の道場に通っていた。
 小学生の大崎さんが自分と同じ小学生で、有段者の座る席であぐらをかいて不釣合いな大きな扇子を広げばっさばっさとあおいでいたのが彼であった。
 成田さんの夢の為に両親は住み慣れた土地を捨て上京し献身的に息子に尽くす。だが残念な事に夢は花開く事が出来なかった。
 大崎さんがずっと音信不通だった彼に10数年ぶりに再会した時はサラ金から逃げまわり、定職はなく、超薄給の古新聞の回収作業をしながら、他にどこにもいくあてがなく辿りついたタコ部屋暮らしをしていた。

 だが彼は、
 「今でも将棋が自分に自信を与えてくれている。自分の支えになっている」 
 と言う。
 勿論そう言い切るのには時間がかかったと思うけど、たくさんの時間と出来事が流れても、なお残ったのがその言葉が残ったのだから重みがある。

 正直に告白します。
 ワタクシ本を読んで久しぶりに、
 泣きました。。。。 
 年を取ると涙のスイッチが入りやすくなる。私がスイッチを押された箇所をまとめて抜粋すると、

 最後別れ際、大崎さんがタクシーのルームミラーをのぞくと、雪の中でニコニコ笑いながら直立不動で手を振る成田さんがいた。
 その姿を見ているうちに大崎さんは涙があふれてとまらなくなる。
 「将棋を愛し将棋を信じ、そして今でも将棋に何かを与え続けられていることに感謝している、40歳の元奨励会員が立っている」

 若い時ならここの箇所では泣いていないと思う。でも年取ると何気ないシーンにツボを押される。
 その何気ない部分に色んな事が詰まっているというのが理解出来るようになったからだと思う。

 何年に一人かの天才少年と言われ、大崎さんが呆然と扇をあおぐ姿を見ていた彼が、愛するご両親を亡くし、お兄さんから勘当され、借金取りから逃げ回る生活を送る日々。
 それが不幸だと思わない。
 成田さんが不幸かどうかを決めるのは、多分成田さん本人で他人が決めるものではないと思う。
 でもラスト付近で成田さんの近況を読んだ時、
 「神様GJ!!!」
  と思った。
 
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2009/05/30 22:06  しゃばなしゅば書房1号
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