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2010-08-28 (Sat)


 日常に潜むちょっとした影を宿した17編の短編集。

 「小さな耳」
 妊娠中の由香里はセールスマンの口車に乗せられて高い胎教用の教材を購入する。それは高校の同級生であった辻堂真希子へのライバル心からであった。当時は自分の方が成績は良かったが、彼女は今天才児辻堂大介君の母親としてマスコミに脚光を浴びていた。
 だが騙されてしまい残りの教材も送られてこず支払ったお金も返って来なかった。お腹の子にその一件を教訓話にして語る事によって自分を慰める由香里であった。
 生まれてきた我が子の博文はどこかおっとりしたのんびり屋さんであった。天才児に育てようとするも人並みより発育の遅い我が子にその願いもあきらめる。だがそれでも由香里は博文が可愛くて仕方がなかった。
  博文の通う幼稚園で誘拐未遂事件が起こる。夫と共に絶対知らない人に付いて言ってはダメと博文に諭すが彼からは意外な返答が有り驚く由香里であった。
 

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 祝!!!完走「女友達」の記事でも書いたように新津きよみさんは短距離ランナーに向いている作家さんだと思う。
 「彼女達の事情」はショートショートで新津さんの短距離ランナーとしての技量が遺憾なく発揮されている。
 短編の上手さは詰まるところ作者の「センスの良さ」がどれだけ作品に反映されるかではないだろうか。
 長編はさすがにセンスの良さだけでは乗り切れないけど短編ならその瞬発力でゴールに突っ走れる。新津さんのセンスの良さがイイ感じで活かされている。
 ホラーあり、ミステリーあり、ホロリありと様々なストーリーが用意されているがどれもキレがあり粒揃いで唸らされる。
 ショートショートというかなり限定されたフィールドで「短距離の名ランナー」と思わせる走りをする新津さんに拍手である。

 17編の主人公達はほぼ女性である。タイトルの「彼女達の事情」というのは上手いつけ方したもんである。
 解説に「日常を一歩だけ踏み越えてしまった彼女たち」とあるが、本当に僅かに日常からブレてしまいそれ故シュールな世界を体験する女性達の物語である。
 自分にも起こり得るような身近な話というわけではないが、誰しもその一歩を踏み越えてしまう可能性は常にはらんでいるんだろうなあとは思った。良い意味の非日常なら退屈しのぎに歓迎だけど、悪い意味の非日常はホラーよりゾクリとする怖さがある。 
 
 幾つかの「彼女達の事情」を紹介すると、
 今の生活に満足しつつも若干退屈している主婦の容子は夫の後輩をつまみ食い。その後輩夫婦をホームパーティに招待するが、相手の奥さんの手作りのケーキの中に仕込まれていた「ある物」に気づきバレていないと思っていた浮気が知られている事を悟る「ホーム・パーティー」
 由紀子はコブつきの山路との結婚を真剣に考えており、彼1人娘の佐織と遊園地で顔合わせする事になる。観覧車に一緒に乗ろうと提案する佐織に由紀子は高所恐怖症のなので躊躇するも仲良くなる為にと同意する。佐織の態度に結婚に反対の意志を読み取るが、その態度は23年前の父親の結婚をある方法で壊した由紀子自身の姿であった「冬の観覧車」
 
 そして私が一番気に入っているショートショートが「小さな耳」
 この作品集の中でも毛色が違う作品である。他の作品が大なり小なり影を含んでいるのに対して、この作品は一種の清涼剤のような優しいトーンの話になっている。
 由香里はいわゆる親馬鹿なんだろうけど可愛いタイプの親馬鹿である。それが上手く作品の中でエッセンスとなって作品を仕上げている。
 「胎教」がキーポイントなのだがラストでそのオチが凄く効いている。オチのカタルシスいう意味では他のショートショートに幾つも優れたものがあるが、この作品の優しい気持ちを抱かせるラストに一番気持ち的なカタルシスを感じた。

 「新津きよみ」という作家の試食には中々もってこいの作品集ではないかと思う。
 

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2010-06-26 (Sat)


 インテリアコーディネーターの今村千鶴は29歳独身。
 周囲の友達が結婚して行くあせり、仕事はやりがいがありつつも色々不満があり、そして現在恋人はおらず以前自分が振ってしまった吉川智樹に未練を抱いていた。
 そんなどこかもやもやとした日常であるきっかけで出会ったのが重松亮子。千鶴が住む高級マンションの向かいにあるポロアパートに彼女は住んでいた。
 今まで千鶴が付き合ってきた友達とは生活環境もタイプもまるっきり違う亮子ではあったがどこかやぼったい冴えない彼女に優越感も感じ、また吉川に「自分と同じ美意識を持った人間としか付き合えない」と言われた意地もあり交流を深めていく。

 仕事の為に三ヶ月間NYへ言っていた千鶴は帰国後別人のように美しく洗練された亮子を見て驚く。
 どうやら恋人らしき人が出来たようなのだが、それまで自分より劣っていると思っていた亮子の思わぬ変貌に嫉妬とあせり憶える。
 そして2人の仲は以前との関係性が変化した事により思わぬ展開を見せていく。。。。
 

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 新津きよみさんは素材コーディネーターとしての才能はある方だと思う。
 面白い素材を用意して独創的な作品を仕上げていくスタイリングは読んでいて「ほほお」と思う面白さはあるし、メニューの盛り付けも読ませてくれる。
 だがたいてい中盤以降は物語の手綱を上手くコントロール出来ず失速し「はあ?」という残念な感想で終わってしまう。
 それがいつもいつも惜しいと思う、才能の煌きを感じるだけに。
 短編はその才能を活かしてキレがあって面白い作品が多いのだけど、長編はたいてい竜頭蛇尾で期待外れに終わる場合が多いので最近は読んでいない。
 多分新津さんは短距離ランナータイプの書き手さんなんだろうなと思う。
 当たり前だけど短距離ランナーの名選手が必ずしも長距離で活躍出来るわけではない。

 ただこの「女友達」だけは見事長距離完走!!!で面白かった。
 ジャンル的にはサイコサスペンスである。
 まず導入部分は千鶴と亮子という2人の女性の人物描写にページが割かれている(それが中盤以降の展開の面白さの助走になっている)。
 千鶴が満たされていない日常の中であきらかに住まいも容姿も劣っている亮子に優越感を抱き屈折した慰めを見出している描写が本当に嫌らしく書けていた。
 でも女性ならそういう屈折した感情に共感出来る部分もあると思う。
 男同士でも程度の差はあるにせよ優越感に浸ったり劣等感を持ったりというのはあると思うが、女同士になると余計にその気持ちに情念篭ってると思う。

 中盤辺りから亮子のキャラが変貌していく。この辺りの変貌ぶりが面白い。
 以前の亮子はどこか冴えない地味な女性だけど手先の器用さ等も活かして親切な女性であった。でもどこかピントのズレた部分もあってクセがある人なんだと思わせる。
 そして変わってからの亮子は内側に押し込んでいた感情を解放するかのようにしたたかに欲しい者を手に入れていこうとする。
 亮子のずるさが絶妙な匙加減でこれまた嫌らしく書けていて面白かった。 本当に女性の「陰」の部分がリアルに書かれていてる。

 千鶴と亮子の仁義なき戦いが中盤以降をぐいぐいと引っ張っていく。とにかく女同士のドロドロした感情が「そこまで書かなくても。。。」という位てんこ盛りであった。
 女性同士のバトルがやがて後半以降の惨劇へと繋がっていく。

 1人の人間が「壊れていく」さまは怖かった。こういう流れは予測していなかっただけに。
 だがその壊れた影には「孤独」があったのだ。
 千鶴も亮子もどちらも抱いていた「孤独」、それが故に親しくなった2人はそれを理解し合い共鳴出来る余地があったはず。
 でも互いの孤独を慈しむ以前に女性としてのプライドの張合いの果てに、「彼女」(ネタバレになるのでどちらの女性かは伏せます)を更なる狂気へと追いやる事になった。
 ラスト辺りで気持ちのすれ違い故に誰もが傷付き大事なものを無くし、その喪失感が悲しく響いてきた。それ故今まで新津さんの作品にはなかった「深み」がこれにはあった。
 まあ、意図したわけではなく結果的にもたらされたものかもしれんが。
 
 壊れた時は男性より女性の方が怖いよなと思わされた。     

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