123456789101112131415161718192021222324252627282930
-------- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
| スポンサー広告 |
2010-09-11 (Sat)
 

 幸せになりたい女性達の6編の物語

 「枕香」
 恭子は過去の苦い経験から今の恋人である晋平には思いっきり自分の欠点を見せていた。
 わがままばかり言い困らせ、元々口数の多くない晋平は恭子から吹っかけられる口喧嘩にあきらめ顔で降参するのが常であった。
 晋平の仕事が多忙の為になかなか会えない日が一ヶ月近く続き恭子は怒り爆発寸前となる。電話で散々晋平を責めた後、会うために夜更けにも関わらず晋平のアパートへ無理やり押掛けるが。。。。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 

 *若干ネタバレ有り
 
  解説の方がカウンセラーなのだけとてもGJな仕事をしていて作品を上手く洗い出していた。
 という訳でこの方の解説を交えながら作品をご紹介したい(解説者の言葉は『』で括ります)。

 乃南さんは何冊か読んでいるが、短編も長編も「なかなか」な方である。もう少し言葉を付け加えるのならソツの無い作品を書かれる方とでもいうのだろうか。
 たま~に大ヒットを飛ばしてくれるので、その球を受けるのが楽しみで読み続けている。

 この作品に出てくる女性は「幸せになりたい」ごくごく普通の女性達である。でも皆自力本願ではなく他力本願で幸せになりたい王子様を待っている女性達なのだ。
 でも現代の女性は素直に待ったりはしない。「待つわ~♪」のあみんちゃんのように忍耐強くはないのだ。自ら仕掛けたり策略したりして王子様をGET!!! しようとするが、でもそれがどこかで狂ってしまい不幸になっていく様が読んでいて女性の私には痛い。
 どの女性もただ「幸せになりたかった」はずなのに、違う方向に流れてしまうのは哀しい。

 この「枕香」はラストの意外性が他の作品を圧倒している。
 恭子は解説者の方が書かれているように『一生懸命に恋愛しているだけ』なのである。でもこの作品集の中で一番哀しいラストを迎える。
 一途さも方向を間違えれば「ウザサ」と紙一重だ。読んでいてこういう女性はさぞかし疲れるなあと思った。
 恭子自身は晋平との小競り合いや口喧嘩も刺激的だと思い恋愛ドラマの調味料だと思っていたが、それが実の所は気持ちが離れる材料になっているとは思っていなかった。
 恭子が共に見ていると思っていた景色と、晋平が見ていた景色が違っていたのが悲劇である。
 「枕香」というタイトルから若干推察出来るように、晋平の家にある客用の枕に残っている香りから恭子は晋平が浮気をしていると断定するのである。
『女の勘は恐ろしいもので「かもしれない」ではなく、何の根拠もなく「こうだ」と決定出来る。』のである。
 でもたいてい男の浮気に関する女の勘は当たっている。女の勘は理論すら超えてしまう

 『男にとって女の「連絡がない」というのを駐車違反程度にしか考えていない』というのは真実だろう。男の世界はもっと広い。自分の持っている世界のうち一つの部屋を恋人の為に明け渡す事が出来ても、何部屋も提供出来ないだろう。
 でも大半の女性にとっては愛する男性との恋愛は自分の世界の大部屋を占める。恋人から「連絡がない」の天変地異の如くである。
 男と女の違いを思った。でも男と女が同じ愛し方をすれば恋愛関係は進まないのかもしれない。

 乃南さんはブラックを書かせたら割と良い出汁出してくれます。


 ランキング落ちているので、ぽちっと押してやって下さい。 お願い致します。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ
スポンサーサイト
| 乃南アサ | COM(0) | TB(0) |
2010-06-09 (Wed)


 「デジ・ボウイ」
 中学校三年の直樹は将来の受験の為に父親の海外勤務に伴いチュニジアにいる家族と別れ、勇おじさん一家と暮らすことになった。
 おじさんの家にはおじさん夫婦と高校生の寛子、小学生の結季、そして直樹と同い年の彰文がいた。
 彰文はほとんど勉強しなくてもトップクラスの成績で直樹はライバル心を燃やしていた。
 だが一緒に暮らしている内に彰文が相当の変わり者である事を知る。無感動、無感情で欲望も無く、いつもクールで淡々としていた。
 直樹はどんな事があっても感情を露にしないしない彰文にだんだんイライラした気持ちを抱き、色々とうるさく注意するが暖簾に腕押し的にまるで効果がなかった。
 結局そりが合わないのだと自分に納得させるがその矢先に直樹はある事件に巻き込まれる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 
 乃南さんも短編の上手い方だけどこの短編集はまあまあかな(エラそうです)。
 主人公は皆愚か者で読みながら、
 近藤雅彦の「愚~か~者よ♪♪♪」 (この歌知っている人どれ位いるのだろう)
 のサビ部分が頭の中にこだましていた。
 主人公達の愚かぶりを馬鹿だなあと思いつつも自分はこんな風にはならないなと、彼らの愚かぶりを読書のつまみにしていた。
 悪趣味である。

 その中で唯一「デジ・ボウィ」だけが他の短編と違う風味に仕上がっている。私はこういう異端者の物語が好きなのだ。
 主人公直樹の従兄である彰文はロボットのように感情がない。何あっても気持ちがブレたりする事かなく、周囲の人の事も自分の事すらにもまるで関心が無い。
 当然だがそんな彰文に生きている実感は無く生への執着も薄い。なんだか彼がとても気の毒というか可哀想だと思った。
 勿論実際彰文のような少年がいてその人間に気の毒というか可哀想だとか言っても彼はなんの事か全くわからないだろう。
 世の中には生まれつき人間として大事な何かが欠けて人間はいる。病気だからとか、つらい目に合ったからとうのでもなく、本当に最初から無いのだ。だから努力とか治療とかで改善出来る余地は無い。
 こういう人間は痛切に「哀しさ」を感じてしまう。
 欠けているのは本人のせいではないし、元から無いから取り戻す事も出来ないので切ない。

 逆に直樹は熱血な活力に溢れた少年で悔しい事があれば悔しがり、怒る事があれば怒り、笑う時は笑うというごく普通の少年である。
 全く対照的な2人の少年の絡み合いが物語を盛り上げている。2人の噛み合わなさというか互いに互いが全く理解出来ない感がよく書けていて、個人的には直樹の方に感情移入してしまうが彰文にも彼の喪失されているものに対して惹かれるものがあった。自分も異端者なのかな思う。

 ラストは意外であった。
 他の短編の流れでなんとなく手加減の無いラストだろうなと予想はしていたけど、ただ他の作品とは違ってある意味感動というか救いを持つ終わりになっておりこんな心揺さぶられる展開が待っているとは思わなかった。
 あの終わり方を救いというのは語弊があるような気もする。そう言って良いのだろうかと。
 彼の行為は突拍子もなくてそのありえなさが異端者振りを深めているけど、でも他人に関心もなく関わる事も無かった彼が咲かした唯一の花のような気がした。
 多分彼なりの咲き方に救いのようなものを感じてしまった。

 こりゃ一本取られたラストであった。

  
  ランキング落ちているので、ぽちっと押してやって下さい。 お願い致します。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ  
| 乃南アサ | COM(4) | TB(0) |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。