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2010-11-13 (Sat)


 小池真理子自選の傑作短編ミステリー

 「妻の女友達」
 広中肇は市役所の戸籍係。彼にとっての生きがいは家族であった。お見合い結婚した妻の志津子は優しくて気配り上手な家庭的な女性で、三歳になる長女のちえみは可愛い盛りであった。
 仕事が終わると真っ直ぐに家に帰り、休みの日はデパートや遊園地等の混雑した所には行かず家族で近所を散歩する穏やかな生活。
 野心等を持たない彼はそんな平和な波風の立たない人生を心の底から満喫しまた妻も同様だと思っていた。
 そんな生活も妻の高校時代の友達である美雪という女性が現れてからさざ波が起きる。
 売れっ子女流評論家の為多忙な美雪に頼まれて志津子は週一回で見の廻りの世話をする事になる。たがその頻度は増え都合よくこき使われる志津子に、元々働く事を快く思わない肇は次第に美雪に対する憎しみを募らせる。
 「アイツサエ イナケレバ」と。。。
 
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「薔薇の木の下」(記事 元中毒患者の証言)でかつて罹った「小池中毒」なる症状を切々と語ったが、その症状を振り返り小池さんの短編でピカ一だと思ったのがこの「妻の女友達」である。第42回日本推理作家協会受賞は心から納得の出来栄え。
 小池さんは本当に短編、長編問わず、どのカテゴリーの作品も高水準で書ける稀有な女性作家である。この作品はその技量の最も旨みのある部分が結晶された作品だと思っている。是非お勧めである。

 とにかく「上手い」、その一言に尽きる。その上手さとはなんだろうかと暇つぶしに考えてみた。
 先の読める展開ではある。小市民の主人公が平穏な生活に波風を立たす妻の女友達に殺意を抱き、それを実行するというのは本来は若干無理のある設定だけどすっと入ってきた。
 主人公に全く感情移入出来ないのだけど、それが最後にある意味のカタルシスになっているのがツボ。
 身勝手な主人公、傲慢な妻の女友達、その2人の板ばさみになるおとなしい妻の三者三様の絡みが面白くてぐいぐい引っ張る。
 
 暇をつぶしながら考え付いたのは手持ちのカードの出し方が上手いという事である。勝負師的な感じで効果的に印象深くカードを出してくる。最後に出されたカードに「おお!!!」という快楽を感じた。この快楽性が凄い。どこかのレビューに「不思議な余韻」がある作品と書かれていたがこれは同意見。その余韻が私の中でずっと残り続けていた。それだけこの作品の持つラストの快楽性に惹かれたのだと思う。一本背負いでやられたという感じのドンデン返し。
 「妻の女友達」よりも面白い作品も、完成度の高い作品もあるんだけど「余韻」を持たせてくれたこの作品の持つ威力に拍手である。
 
 直木賞を受賞された「恋」以降は耽美的なものが多く、まあそれはそれで味わえないわけではない。
 でも私個人としてはミルクティーよりもブラック・コーヒーが飲みたいなあと思うので、そろそろミステリーを書いて欲しいなあと思う。

 ちなみに裏表紙に小池真理子さんの若き日の写真が載っていて、彼女の美貌が拝めます。 

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| 小池真理子 | COM(2) | TB(0) |
2010-02-06 (Sat)
   

  芙美子の継母である照代が急死する。いつも控えめで芙美子や弟の良い継母であった。
 いつかその恩に報いようとは思っていたが、多忙を理由に中々親孝行らしきものが出来なかったのが悔いとなった。
 人妻でありながら年若い愛人との関係を続けた美しい実母のさよ子。
 さよ子の事故死後、年若い愛人は後追い自殺をし2人の恋物語はピリオドが打たれる。父親は看護婦であった照代を後添えとしたのであった。
 照代の遺品を片付けている時に芙美子は古い新聞の切り抜きを見つける。
 その記事には事故で亡くなったとばかり思っていた母のさよ子の死因が載っており、それまでの記憶が思い違いであった事を知る。
 そして新聞記事をきっかけとして自らが封印した恐ろしい記憶をよみがえさせる。

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 小池真理子さんは作家でご主人の藤田宣永さんと「夫婦公論」(溺れる)でペンによる長調八兆のおもしろ夫婦バトルを繰り広げられているが、舞台を変えられてもペンさばきはさすがである。

 個人的に小池さんは長編も短編もどちらもとても上手い作家さんだと思う。
 ただ長編に関しては耽美的な物が多いので好みによって合う合わないがあるけど、短編はキレがありひねりの効いたオチが素晴らしい作品が多い。
 一時期「小池中毒」なる病に罹り短編を中心にかなり作品を読み漁った。
 中毒というの一度罹ると自らの力では抗い難いものがり、罹ったなと思った時には既に遅く、沼地のように足を取られどっぷりとその世界にはまってしまう。ブルトーザーのごどく小池作品を網羅していった。 
 今はやっと中毒から抜け出している。
 中毒というのは楽しい反面しんどい事もあるので今は穏やかな日和である。
 
 その元小池中毒患者である私が今回ビックアップした短編は作品の出来としては「スペシャル」という程ではない。どちらかというと地味目の作品である。
 他に傑作短編が幾つも有るし、同作品に収められている他作品の方が完成度も面白さも上の作品もある。
 それでも私が小池さんの数多くの短編の中でもこの「封印の家」が特に気に入っているのは、ラストの着地点の光景が好きだからである。
 読み終えた時、
 「ジーン」
 と言葉のままに感動しちょっと(恥ずかしながら)泣けた。

 主人公の芙美子は実母さよ子よりも継母の照代の方が好きだったし絆も感じていた。
 だがやはり母親ではなくあくまでも「照代さん」であった。物心がついてからの再婚でもあり、照代はとても慎ましいので自分という存在を強くアピールする事もなかったせいもあり一定の距離感が常にあった。

 芙美子がラストで照代が自分に注いでくれた愛情の深さを知る事になる。芙美子自身も忘却していた「罪」を唯1人知っていた照代はその秘密を誰にも漏らすことなく自分を見守り育ててくれたのだと。
 その下りが悲しくも切ない。
 何故なら自分にとって真の母親が誰であったか知った時に感謝すべき相手はもういないのだから。

 地味な話ながら要所、要所にさりげない磨きをかけ、ラストで光らせる小池さんの職人技である。

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