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2009-12-02 (Wed)
   

 17世紀のキリシタン弾圧の激しい日本。
 ロドリコを含めた三人の宣教師は日本へ潜入する。彼らの師であるフェレイラが弾圧に負けて棄教した事を知りその事実の確認と、日本へ信仰を広める使命感に燃えて命がけの入国であった。
 たが想像以上の苦境が待ち構えていた。
 次々と降りかかる苦難によりロドリコは1人残され、遂には密告により捕まえられてしまう。
 そしてロドリコは棄教を迫られ、究極の選択を強いられる。

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 *全編ネタバレアリ

 今回の記事は長い旅路です。

 今まで一番怖かった小説は何かと問われたら私は迷うことなく「沈黙」と答える。
 でもこの作品は決してホラー小説ではない。遠藤周作センセがお書きになられた胸を打つ文学作品である。
 私にとって何が怖かったかというと「自分が信じている世界が無残な形で崩壊していく恐怖」である。
 「沈黙」は宣教師ロドリコが苦悩の果てに信仰を捨てるというシンブルなお話しなのだけど、その過程がなんともやり切れないのである。

 激しい迫害と苦境の中でロドリコは神の救いを求める。必ず光がもたらされると信じ続ける。
 だがどれだけ祈っても奇跡は起きない、何も起きない、神はただ沈黙するのみ。
 「神はなぜ、沈黙しているのか?」
 宣教師にとって神への信仰というのは自分の全生涯を捧げた、アイディンティティの拠り所である。
 その拠り所が揺らぐ恐怖というのは無宗教の私でさえ恐ろしく思う。
 
 ロドリコへ棄教を迫る為に究極の選択が投げかけられる。信者を拷問にかけ彼が棄教すれば信者達は助かる。
 信者を助けるために信仰を捨てるか、それともあくまでも教会の教えを守り抜くか苦悩の果てに遂にロドリコは転ぶ。
 この下りは体感温度が-2位下がる程ゾクゾクきた。恐怖新聞より恐怖である。

 私が凄く疑問に思ったのは「ロドリコは敗北したのだろうか?」ということである。
 確かに宗教という形式を裏切ったのは事実だが神様を裏切ったわけではないと思う。
 信者達を見殺しにした方が「アカン」と思う。見殺しにした時点で信仰はお飾りのお題目である。
 神様と一対一の図式ならロドリコの行為は「是」のはずである。信仰とはなんだろうかと考えさせられた。

 棄教した彼らは外国人である事も捨てらさられる。
 日本名を名乗りその後の人生を日本人として生きていく。
 私が日本人である事を捨てらさられ、
 「キャサリン」
 なんて名乗らされて生きていく事を押し付けられたら生きて行けないと思う。生きて行く事が死ぬよりつらい。
 
 だがロドリコは背教によってそれまでとは違った意味での神の存在を認知する。
 この作品で最も私の心が揺さぶられたのは、
 「やはり私はあなたを愛している」
 という言葉である。
 全てを失った彼はその代わりにより深い神への愛を得る。これまでの苦悩もこの愛を得るための出来事であったと悟る。
1人の宣教師の棄教の物語が、実の所は神への新たな愛に目覚める信仰の物語という反転図のオチにシビレてしまった。本を前に平伏した。 
 読み終えた時、
 「・・・・・」 
とタイトルとは違った意味で沈黙していた。
 あまりに感銘を受けたら人は言葉を無くすんだなと気づいた。
 
 この作品は「強さ」と「弱さ」にも語られている。
 メインディッシュが強烈なだけにつまみのような存在になるが私にとってはこちらも味わい深かった。
 ユダの役割を振り当てられるキチジローという人間が出てくるが、彼は自分の弱さを嘆く。弱いが故に死ぬ事も出来ず、そして人を裏切る。強い人間を羨望する。
 でも私は思う。
 作品にも触れられているが、弱い人間だけが悲しいのだろうか。そうではなく強い人間もまた悲しさを持っている。
 弱い人間も強い人間もただその立ち位置が違うだけで、強い人間は強いなりの苦悩も悲しさもその世界にあるのだ。 強いからといって弱い人間より苦悩しないわけではないのである。
   
 この作品を生み出してくれた遠藤センセには天国へ向って手を合わせたい。

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