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2010-05-05 (Wed)


  若い女性がメッタ刺しにされた上に人差し指が一本切り落とされるという事件が起こる。
 西條はその事件の担当となる。刑事としては端整な顔立ちでシャレた格好は気取っていると揶揄する者も多く、あまり周囲の思惑を気にするタイプではないので反感も買っていた。だが優秀な刑事でも有り妬みを持たれながらも一目置かれているのも事実であった。
 最初は通り魔的な犯行と思われていたが同様の事件が再び起こり連続殺人事件の可能性を帯びてくる。
 やがて「指蒐集家」と名乗る犯人によってネットでの殺人予告や実況中継等、警察は翻弄されていく。
 しかし中々決定的な手がかりが掴めず捜査員達はあせりは増すばかりであるが、事件の渦中で西條に身にも思いもかけない窮地がもたらされる。


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 今回は貫井先生に辛口味の記事です。

 東野先生運転のドライブは安心して乗れる。きっと楽しい旅路になるんだろうなあという信頼感がある。
 でも「愚考録」以降の貫井先生運転のドライブは「大丈夫かなあ、とんでもない所に連れて行かれないだろうなあ。。。」と心配しつつ乗り込む事になるのだ。何度か受け入れ難いあまり納得のいかない所に行ってくれたので不安になってしまう。正直「乱反射」に出会うまでは私の貫井先生への評価は下降線の一途であった。
 ただ今回は前回の「乱反射」が大金星だったのでいつもよりは身構えることなく少しワクワクした気持ちを抱いていた。

 が、呑気に乗っているうちに「これはひょっとしたらいつものパターンかしら?」と思いつつも、途中下車は嫌いなので頑張って読み進めた。
 やっぱり「おーいどこ行くんだあ」という運転になっていった。「おいおいおいそんな所に連れて行くの?」という展開にげんなりしてしまった。
 東野先生は良い意味で読み手の思惑を裏切ってくれる。それは読者を楽しませたいという意図を感じる内容である。 でも貫井先生は意外性のある展開ではあるのだけど、読者を置いてきぼりにするような裏切り方というか展開なのである。少なくとも私にとってはそうである。運転手の行きたい所にへ行く感じて同乗者する者の思惑はかんがみていない気がする。
 東野先生の時の「あー」は「感嘆」の意味だけど貫井先生の場合の「あー」はやっぱりこう来たかという「溜息」なのである。 

 3分の2を読んだ辺りで真犯人が解かってしまった。でもこれは私のお頭の出来が良いからではなくミステリーを読みなれていればこの人しか落とし所がないから解かっただけである。
 アマゾンのレビューを読んだらやはり早い段階で真犯人のわかった人が多く、終盤の展開が犯人の意外性の無さをカバーしきれておらず興ざめしてしまった。  
 前半辺りまで作品が間延びした感じでこれは後半か終盤辺りに怒涛の展開でないと納まらないなと思っていたら、案の定後半辺りから急展開。勿論そういう意図の展開なのかもしれないが展開が急速過ぎて呆気に取られてしまう。まあこの辺りは好みになるのかもしれないが、私は徐々に膨らんでいく展開の方が楽しめる。

 それと今回の作品における登場人物は感情移入しにくいのである。
 貫井先生の作品の中で私にとって2トップは「殺人症候群」と「乱反射」である。この2作品は本当に読み応えのある良い作品だと思う。
 人物の思惑や感情もちゃんと織り込まれていてより説得力のある物語であった。でもこの作品は主要人物の感情に説得力が弱いせいか物語的に弱さを抱える事になる。
 以上、今回のドライブはブーブー言いながら乗っていた。

 色々と書きましたがやはり貫井先生には期待が大きく、また楽しいドライブに連れて行ってくれるのを待っております。

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| 貫井徳郎 | COM(6) | TB(0) |
2010-03-31 (Wed)
 

  結婚にまつわる八つのお話
 
 「崩れる」
 芳恵は毎日の生活に疲れていた。つらい単純作業のパートに出て家計のやり繰り。それも自称イラストレーターと称し全く家にお金を知れない夫浩一のせい。
 浩一はどうしようもない「カス」であった。人間としての最低限の責任感ももっておらず無責任極まりない男であった。仕事で疲れて帰って来ても食事の支度は芳恵がせねばならず、彼女はひたすら息子義弘が結婚するまではと離婚を我慢していた。
 たがその期待の息子はアニメーターになると夢見てせっかく就職したばかりの銀行を辞める。そして暫く無職のままで過ごす。義弘は夫浩一のダメな所がよく似ていた。 
 希望は潰え、自分と同列と考えていた友人が借家住まいから抜け出し家を持ったと知り心に亀裂が入る。
 少しずつ芳恵の中の心の燻り続けた炎は暑い暑い夏の日に燃え盛る。
 

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 貫井さんとの初お見合いはこの短編集である。
 図書館で何気なく手にした時なんとなくビッビッ!!!と来るものがあり借りてきた。こういう勘はたいてい当たるが、見事ビンゴである。  どの作品もピリッとしたスパイスが効いていて面白かった。
 貫井さんの上手さが端的に堪能出来る短編集だと思う。

 ラストの伏線が故に夫浩一のカスぶりと息子義弘のダメぶりが執拗に書かれていてその描写が本当に効く。読んでいてみのもんた口調で「奥さん大変だね」といたく芳恵に同情してしまった。
 芳恵の出口の見えない袋小路的なやるせなさがよく書かれている。
 ラスト辺りでそのやるせなさを「暑さ(熱さ)」と結合させて爆発させている下りは圧巻である。読んでいて心というより「暑さ(熱さ)」が皮膚感覚に訴えて来る感じだった。
 解説者の桐野夏生さんもおっしゃっていたがラストの悲惨さはカタルシスだと思う。本来ならば悲惨なラストが悲劇ではなく「ああすっきりしたな」という感しで、その爽快感がなければ物足りなかった作品かもしれない。その着地点への持って行き方が気持ちと感覚の両方に訴えかけてるのが巧みである。

 どの作品も結局の所他人との関係性に潜んでいる「怖さ」が描かれている。
 通常は会社であっても親しい友人や肉親でも当たり前だけどその関係性に応じた距離感で付き合っている。
 だが一旦その距離感が崩されその関係性を一皮剥けば思わぬ闇がある。それは多分どんなに愛情を抱いている者同士であっても存在しているものだと思う。
 そういう普段は潜んでいるが間違いなく抱えているはずのその怖さを見せ付けられた気がした。
 お日様が当たるごくごく普通の日常に潜む「闇」というのは人事ではない、いつ自分もそれに出くわす事があるかもしれないというじわりと来る怖さであった。

 モチーフが同じでも趣の違う作品を8つの作品は読み応え十分である。
 私と貫井さんの初お見合いは成功であった。 

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| 貫井徳郎 | COM(6) | TB(0) |
2009-11-11 (Wed)
 

 ある1人の幼児が風に吹かれて倒れてきた街路樹の下敷きとなり亡くなった。
 それは一見人災事故以外の何物でもなかった。
 だがある観点から見た時それは殺人と呼べるものでもあった。
 幾人かの人間のちょっとしたモラル違反が連なり、結果として1人の幼児に死をもたらしたからだ。

 この一件に関わる人々が事故を起こす契機となるエゴイズムの過程と、事故後、被害者である幼児の父親の「何故我が子は死ななければならなかったのか?」を追い求め、残酷な現実に直面していく姿が描かれている。


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 *ラストのネタばれ有り!!!

 久々に「怖い小説」を読んだと思った。と言ってこの作品はホラーではありません。
 ホラー小説は怖さの対象がわかっている、それは幽霊だったり、狂人であったりと。
 だがこの小説の怖さはそういう明確な対象がない所である。不特定多数のやりきれない現実の数々が怖かった。
                           
 この事故で明確に法によって裁かれるのは街路樹の診断を心の病により怠った業者の男性だけである。彼は不潔恐怖症の為に犬の糞が放置された街路樹を診断出来ず、それが倒れてしまい事故が起こる。
 彼は心から悔い、そして彼の家庭は崩壊する。
 だが犬の糞を放置した者、それを片付けなかった市役所職員、自動車を乗り捨てて救急車の行く先を阻んだ者、診療拒否した自分勝手なアルバイトの医師等は裁かれる事なくいつも通りの日常を送る。

 ちょっとしたルール違反というのは誰しも覚えがあると思う。生まれて現在までそんな事したことない人間なんていないだろう。
 「自分だけなら、一回だけならいいだろう」という些細な自分勝手は社会の至る所で毎日起こっている。
 この作品に出てくる困ったちゃんは自分でもあるのだ。キャラを立たせるためにアクのある人物造形になっているが、自分もなりうる可能性のある自分自身の姿ともいえる。
 そこが怖かった。 

 読み進めていくうちに被害者の父親である加山の絶望が心に迫って来た。
 個々の身勝手さが我が子を死に追いやったとしても、それらは法律では裁けない。
 そして糾弾すると誰しもが罪悪感を持ちつつも「たががこれ位の行為で」と自分の行為を罪と認めず謝罪しない。
 モラル低下の現代社会のひずみの深さをみるようだ。
 くどいがホラー小説ではないのに私は読みながら何度も、
 「ごっつう、怖いっす」
 と呟きながら読んだ。
 
 と同時に小さなモラル違反を「犬の糞を始末しなかったあんたは人殺しだ」と罵る加山に「それは言い過ぎじゃないかな」と思う自分もいた。そしてそう思う自分に罪悪感を覚えた。
 ちょっとした身勝手さが積み重なって我が子の命を奪ったのなら、その一つ一つに憤るのは当然とは思う。    でも皆仏様ではいられない。
  誰しも自分の些細なルール違反が結果として人の命を奪うとわかっていたら決してそんな事をしないだろう。 それを想像力が足りないと言い切るのは厳しい。
  でもそう思う私は知らぬうちに現代社会の病理に病んでいるのかもしれない。
  自分の些細な身勝手な行動が思わぬ波紋をもたらすことも、決して現代社会ならないとは言い切れない怖さを感じた。
  
  貫井さんの作品のラストは劇苦のものが多いがこれも同様のゴールを用意されている。
  ネタバレになるがラストで加山自身も自分のした些細なモラル違反を思い出し、自分もまた糾弾した人間と同じと気づき、自分が子供を殺したのかと絶望するシーンは寒気がする位怖かった。

 ホラー小説より怖い小説だった。 
 
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| 貫井徳郎 | COM(3) | TB(0) |
2009-02-02 (Mon)


ある日突然天災のような「悪」に人生を破壊された被害者とその家族達。
 愛する者を奪われた者の復讐は有りなのか?その主題を軸に物語は進む。

理不尽に愛する者を奪われ人を殺める者-----------
 愛する者の為に人を殺める者-----------
 ただ欲望の為に殺める者----------
 彼らの行き着く先にある世界は-------------

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 これは面白かった。ストーリー展開にすっかり引き込まれた。正直この作品があまり話題にならなかったのがとても残念。もっともっと評価されていも良い作品だと個人的には思う。
 以前貫井さんのインタビューを読んだ時、自信作だったこの「殺人症候群」があまり話題にならなかった事が残念だというようなコメントがあったけど、そりゃそうだろうなと思った。
 その後これまた個人的に貫井さんの作風が迷走しているような感じにも見受けられるので余計評価して欲しかったなと思う。

 この作品は色んな登場人物の「やるせなさ」が漂う。
 だがそのやるせなさが作品を面白くさせている。
 皆それぞれの事情を抱えており、それが正しいとか間違っているとか容易にそういう物差しでは判断出来ない行為へと駆り立てる。

 自分が第三者の位置から見ればその行為は当然間違っているといえなくもないけど、そういう答えを紡ぎだすのにためらいを感じる。
正しくないのはわかっているのだけど、感情的にはその行動に共感してしまう。
 こういう時は正しさってなんだろうと考え込んでしまう。正しさで人は救えないし、救われない時もある。

  自分が愛する者を理不尽な悪によって奪われたら当然復讐を考えると思う。ただ、その果てにある世界は自分が望むような世界があるわけではないんだろうなとこの作品を読んで思った。
 きっとその世界へ言ったら、もうこちら側へは戻って来れない。 
 
 「愛する者を奪われた者の復讐は有りなのか?」
 この問いに明確な答えは出せないけど、1つの形を提示してくれる作品だと思う。

 *この作品は「~症候群」シリーズ三部作の最終作だけど単独で充分楽しめる(というか他の症候群シリーズは今イチ。。。。)

 応援願います

| 貫井徳郎 | COM(0) | TB(0) |
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