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2010-10-20 (Wed)


マンガ家として有名である内田春着さん。彼女の自伝的私小説。

 「私は、よく娼婦の顔をしていると言われる。~十五歳のとき、私は娼婦だったのだ。売春宿のおかみは私の実母で、ただ1人の客は私の育ての父だった」
 静子は妹の知恵と母親、そして育ての父親との四人暮らし。実の父親はろくでなしで静子が幼い頃に出て行った。育ての父親もこれまたろくでなしで何かにつけて威張り散らし、知恵や特に静子の一挙一動にケチをつける。実の母親はそんな父親の味方であった。
 静子にとって息苦しい現実の唯一つの慰めはマンガを描く事であった。


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 この物語の主人公である静子はよく考えたら不幸である。 「よく考えたら」という枕詞がつくのは文体が淡々としているせいか物事を突き放している視点のせいなのか、少なくとも私は静子があまり不幸だなあという意識は持たなかった(さすがに大変だなあとは思ったけど)。
 でもレビューを読んだら「不幸」という言葉が割りと目につくのでよく考えたらそうなんだなあと思った。
 私はこの小説を虐待に焦点を当てるのではなく、1人の女性の生きて来た物語として読んだ。

 義父が凄いろくでなしである。徹底的な亭主関白で家庭内で威張り散らすこと、威張り散らすこと。筋違いの「スパルタ教育」という名の下に子供達を監視・管理する暴力三昧。そして遂には義理の娘である静子に性的虐待を行なう。
 実母はそんな父親に追従し母親である前に女であり続け、家庭内で起きる出来事に対しては常に「傍観者」であった。夫の娘への性的虐待すらも黙認する。
 そんな静子の救いの見えない現実世界での陰惨な日々が綴られている。
 と、こうやってあらすじをおさらいすると壮絶な内容なんだと改めて思った。 よく考えなくてもそうなんである。でもこの作品は私が読んできた「児童虐待」ものとは一線を画していた。
 
 紛れも無くここに書かれているのは親から子への虐待である。
 本当は「ああ可哀想だ」「ひどいなあ」と同情すべきなんだろうけど、そういうネガティブな感覚にあまり引っ張りこまない余白がある。なんか主人公が作品世界を泳いでいる感じなのである。少なくとも私にとっては。
 そういう作品世界なのは内田春菊さんの性格なのか、作り手としてのセンスからなのかはよくわかんない。でもいい作品だからどっちでもいいんだけど。

 この作品はあくまでも自伝的私小説だから勿論フィクション部分もあるだろうが、大筋は内田春菊さんの実体験だと思われる。
 家庭内において彼女は「生贄」だったんだなと思う。母親が家庭内で自分を守る為に娘を差し出したのだ。
 基本淡々とした文体だけど母親に対する思いの部分にはそれとは違うトーンが感じられる部分があり、その辺りが内田さんの真実の吐露なのかもしれない。
 詰まるところ義父は赤の他人だけど、実母は血が繋がっているから余計やりきれないだろう。諦観者であった実母の方が性的虐待をした義父よりもある意味残酷だ。

 レビューにもあったがクールな描写が負った傷の深さという見解にも同意である。
 ぬぐいきれない傷を負っていらっしゃるだろうけど、それでいながらも母としても女としてもマンガ家としても大活躍されている内田春菊さんはアッパレだと思う。
 失礼な言い方であるがこういう自伝的小説を出されるのは「不幸の元を取る」という感じのたくましさを感じて私は好きである。

 「自分」という物語のあらすじを他者によって歪められたとしても、強い意志があれば物語のあらすじは自分で綴れるのだと思わせてくれるのが嬉しい。


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